エッセイ:リーダーの「器」とは何か(3)
リーダーの論理的思考力
さまざまなビジネスパーソンに接するにつれ、筆者は次第に、リーダーに求められる“器”とは正しく物事を考える力、それも論理的思考力にあるのではないかと思うようになった。そもそも決断、とりわけ経営者が下す決断(戦略)とは、不確実な未来へのコミットメントを意味するものであり、耳触りの良い総花的な見解を示すことにはならない。本当の戦略とは、暴走と表裏一体である。
これは推論だが、多くの人々が語る「経営者の器」論には、こうした重い決断を引き受けるだけの度量のなさといった意味が込められているのではなかろうか。決断が怖いのは根拠がないからである。根拠の不在は、論理を積み重ねるによってしか埋めることができない。無論、どれだけ論理的に考えたところで、絶対に成功する保証などないが、正しく思考すれば、かなりの程度まで問題を突き詰めることができるのである。
逆説的ではあるが、そうした決断が不確実に満ちていればいるほど、リーダーは自らの決断に至ったことの根拠を論理的に示す必要がある。部下は、リーダーの下した決断に、自分の夢を重ね合わせることができるかどうかという観点からリーダーを見ている。どこかの意見の“ダウンロード”や、「最後は合議で決定」といった何を決定したのかわからない決断に、どうして自分の夢を重ね合わせることができるだろうか。
戦略策定のプラス、マイナスは100対0どころか、70対30でさえないでしょう。その点を十分見極めたうえ、51対49と思えるところまで突き詰め、白黒をつけるのが、経営をすることだと思います。(清水勝彦(2007)『戦略の原点』日経BP社)
部下は、リーダーの決断の背後にある論理を欲している。それは、合理的に割り切れものばかりではないかもしれない。直感、哲学、夢などが入ってくることもあるだろう。しかしどんな根拠であれ、それを論理的に伝えることを怠ってはならない。伝えること自体が、あなたの会社の論理性を高めていくのである。
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